鳥のさえずりが聞こえる。

カーテンの隙間から漏れる日の光から、いつも起きる時間より少し余計に寝てしまったことがわかる。

もうおきなくちゃと呟き、ゆっくりと同じ高さから自分を見つめる瞳を見つめ返す。

青い瞳が、日の光を浴びて微妙な色合いを醸しだしている。

「おはよ、景吾」

微笑んだ私に景吾はその表情を殆ど崩すことなく、ゆっくりと囁くように言った。

「起きて平気なのかよ」

昨日は術式の途中で無理がばれてしまい、そのまま寝かされたから…心配をかけたんだと思う。

僅かに申し訳なく思いながら、それでも笑みを強くして答える。

「うん、もう平気だよ。景吾ならわかるでしょ」

もうちょっとこの腕の中に居たい気もするけれど、この分だとみんなにも早く顔を見せたほうがいいようだ。

意識して軽やかにベットを出た私に、同じくベットを出た景吾はちょっと嘆息し、いつものように頬にキスしてくれた。








景吾と一緒に部屋を出ると、リビングでは侑士が本を読んでいて、その横のソファではジローちゃんが丸くなり、がっくんは本は本でもこの間手に入れた絵の多い本を読んでいるようだった。

侑士はちょっと本から目線をあげて、にっこりと挨拶。

「おはようさん」

侑士は少しだけ探るような目で私と景吾を見たけれど、それも一瞬のことで、私の様子を伺っていたみたい。景吾が横で頷く気配がした。

「顔色いいみたいやな」

「うん、ありがとう、侑士」



おはよー!もう起きて平気なのかよ!」

侑士との会話を遮るようにがっくんが本を放り出してこちらにやってきて、その拍子でおきたジローちゃんが目をこすっている。

あぁ、やっぱり相当心配されてしまったみたいだ。

朝からテンションの高いがっくんは、昨日私が眠った後起きたことを身振り手振り混じって話し、目の覚めたジローちゃんもそれに加わった。

がっくんとジローちゃんは昨日と同じ服装で、あの後私が目覚めるのを待っていてくれたそうだ。

代わる代わる話すがっくんとジローちゃんと話していると、朝の気だるい雰囲気も吹っ飛んでいくみたい。




さん、おはようございます。紅茶でいいですか?」

一気に騒がしくなったリビングに、長太郎がキッチンから顔を覗かせた。

「おはよう、長太郎、そういえば一昨日良い紅茶が入ったの」

そう言いながら立ち上がろうとした私を隣に座った景吾が制し、先に静かに告げる。

「鳳、いつもの棚の左端に新しい袋があるからそれで俺の分も入れてくれ」

「わかりました」

長太郎は穏やかに笑ってキッチンへ帰ってしまった。手伝おうと思ったのに。

「お前は座っていればいいんだよ」

「そうだよ、。俺手伝ってくるからね。は座ってて」

景吾に髪をなでられ、ジローちゃんにまでそう言われては座っているほかない。

ちょっと横目で見ると、景吾と侑士は口元だけで微笑んで、がっくんは私が昨日まで読んでいた本を持ってきてくれた。




「はー、疲れた。忍足、難しすぎだぜ。お、起きてるじゃん」

「何言うん、そんなん初歩の初歩やないの」

「亮、お帰り。それからおはよう」

姿が見えないと思ったら、亮は侑士の命により薬草を摘んできてくれたらしい。

いつもならそういうのは侑士が率先してやってくれるのに、昨日はがっくんが騒ぎそうになるのをなだめてくれて、それを見た亮が代わりに行ってきてくれたのだろう。

「亮、朝からごめんね。足りなかったら私も後で手伝いに行くから。」

「んー、なんとかなるんじゃね、多めに摘んできたからよ。」

亮は手をひらひらさせながら言う亮の髪には多くの朝露があって、きらきら綺麗。

でもそのままだと風邪を引くと思ってタオルを取り寄せると、亮はさんきゅ、と言いながら大人しくそれを受け取ってくれた。


みんなに昨日私が出来なかったことから何から何までやってくれたみたい。申し訳ないな。

そこでふと気づく。

「術部屋、片付けてこないと。薬が危ないわ」

「それなら樺地がやってる」

それを合図にしたように崇弘がリビングへ入ってきた。景吾と私の姿をみとめて、

「跡部さん、終わりました。さん、おはようございます」

「ありがとう。身体、薬で怪我しなかった?大丈夫?」

「大丈夫です」

表情にはわかりにくいけれど、少し目を細めて崇弘はキッチンへ入っていった。

亮は侑士と薬草の選定を始め、がっくんはジローちゃんのかけていた毛布を干しに行った。

私は昨日の術式の確認、景吾はどこからか本を取り出し読み始めた。










紅茶の良い香りがする。甘い匂いは長太郎がブラウニーでも焼いてくれたのだろうか。

帰ってきたがっくんがキッチンへ駆け寄り、ジローちゃんと一緒にちょっと危なっかしい手つきでポットを運んでくる。

薬草を仕分けしていた侑士と亮は手を休め、テーブルを片付ける。

最後に長太郎と崇弘が大量のパンとやはりブラウニーを持って綺麗に並べる。

みんなが席に着いたところで、景吾が手馴れた所作で紅茶を注いでくれる。

なんとも言えない香りが広がり、私はみんなに軽く微笑む。

にぎやかな、本当ににぎやかな、ちょっと遅めの朝食がはじまる。



「今日は久々にみんな勢ぞろいね」

「それだけお前が大切なんだよ」

景吾が笑う。

みんなも笑う。

とても良い日になりそうだ。




これが、私の日常。




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